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静粛な山 [剱立山]

毎日暑い日が続いて、身体も夏仕様に変わってきた。
この週末も暑さ対策が必要かと思っていたが、室堂から上は寒かった。
これでは、なかなか雪がなくならないわけだ。

この時期は、平蔵谷を登下降するのが楽だ。
しかし、近日ブロック崩壊事故があったばかりで、霧で視界不良も予想していたので別山尾根を使うことにした。
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剱御前小舎から見る剱岳の雪は随分減ったものの要所に残雪が見えた。

下界は暑いが、ここは寒いくらいで気温差が激しい。
風雨激しく、落ち着かない夜だった。
 
日本海に気圧の谷が入り、湿った空気の影響で、霧がしつこく纏わりつき、風も強烈だ。
早朝4時に出発予定だったが、風が弱くなるまで出発を遅らせた。
タイミングを見計らい剱御前小舎を出た時には視界はほとんどなかった。
しかし、三田平で一瞬視界が開けた。
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剱岳の全容が見えた。
改めて凄い山だ。
どんな環境になっても、この山を案内できる私は幸せだ。
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剣山荘から一服剱の残雪は、この時期嫌らしい。
雨が介在して雪面硬く、あまりに危険なので、黒百合のコルへ左上してから薮漕ぎして一服剱へ。
トレースは全く見当たらず、しばらく誰も登っていない様子。
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アイゼンを履いたり脱いだり、いろいろと忙しい。
雨も降ったり止んだり…。
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前剱は大岩から上に雪がベッタリ載っているが、西壁寄りを登れば問題なくルートは取れる。
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やはり、前剱大岩は出ていた。
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大岩から肩までの鎖場は完全に埋まっているが、左から稜線上を行ける。
あとは、平蔵ノ頭周辺でアイゼンを使用するだけで山頂まで問題はないはずだ。
しかし、ここからは強い西風をモロに受けるし、様々な事情で敗退するしかなかった。
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剣山荘に寄ったら、7月1日からの小屋開け準備に忙しそう。
皆さんの元気な顔が見れて嬉しかった。

今は静粛な剱岳だが、もうすぐ長くて熱い夏が始まる。
 
剱岳はどのルートであっても、準備ができていない人が登れる甘い山ではない。
ガイドがいても歩くのは自分。
技術はカバーするので、体力、装備、そしてなにより折れない心はしっかり準備して来て欲しい。
 
余計な情報は要らない。
山行記録から得た先入観は、時に邪魔となる。
その情報は、その人がその時に経験しただけの話で、山は時期と気象とタイミングで全く別物に変わってしまう。
まして、どこの誰だかわからない人が発信した一方的な話は参考にもならない。
 
そんなことを気にするより、山に畏敬の念を持ち、自らの経験を豊かにして、隠れたリスクをコントロールする意識の方が大切だと私は思う。

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