風立ちぬ [剱立山]
ワクチン一回目を接種したら、副作用が出て暫く体調崩してしまいました。
私の身体に合わないのかもしれない。
二回目接種はかなり気をつけないと。
で、6日ぶりの剱岳へ。
とりあえず、初日の快晴は嬉しい。
久しぶりに剱沢へ寄ってみた。
カルピスは最高に美味かったよ。
いつもありがとう。
例の池も寄ってみたが、風で波が立って良い画が撮れず。
さっさと剣山荘へ。
ヤマテンをチェックしたら、急に前線が日本海へ南下してきているらしい。
翌日は風が強く雨が降り出しそう。
朝四時に出発するが、既に風は強い。
不気味な空の下で、不安な一日の始まり。
前剱を越えたら、霧雨模様で景色もなくなってきた。
びしょ濡れのタテバイは嫌らしい。
初めての剱岳チャレンジで360度の景色を見せてあげたかった。
また、季節を変えて、ルートを変えて来て欲しい。
びしょ濡れのヨコバイを降りたら、急に天候回復。
あと、一時間出発を待てば良かったとこの時は後悔した。
その後、三社のツアーグループとすれ違った。
剱の山小屋で新規感染者が出ないことを祈る。
今や、知らない人と接種することには充分注意しなければならないし、今までの常識は通用しない。
剣山荘へは10時に到着して休憩後に、雷鳥荘のカキ氷を目指し、剱御前小舎に登り返す。
だんだん怪しい雲が各所に現れてきた。
11時から雨が降り出し、昼過ぎからは本降りの雨に変わった。
びしょ濡れになったけど、カキ氷は幸せだ。
そして後述。
平蔵ノコルでツアーの団体とすれ違った。
切れ目無く続く列とすれ違ったら、後の一般登山者は渋滞。
コロナ禍以来、久しぶりにこのような光景を見た。
そして驚いたことに、ツアー客の一人が東大谷側の崖へ降りだそうとしていた。
おもわず、ガイドらしき男に「こんな場所で、お客さんから目を離すんじゃない」と怒鳴ってしまった。
渋滞したタテバイ。
罵声も聞こえる。
先頭はカラビナ架け替えシステムのツアーグループ。
剱岳をガイドする資格を持たない人々が普通にガイドしても何の話題にもならない。
しかし、剱岳を楽しみに来た登山者に迷惑をかけることには虚しさを感じる。
私はひとりの剱岳を愛する山岳ガイドとして、見たくない光景ではある。
この渋滞で時間を取られた登山者は、昼過ぎから降り出した雨の影響を受けたことだろう。
剱岳別山尾根のような追い抜きが難しいルートは、ツアーグループ出発前に登山開始することを勧めます。
山小屋の前で体操を始めたら、その隙に出発しましょう。
2021-08-29 14:47
秋雨前線に絡まれて [剱立山]
富山県も蔓延防止等重点措置適用となり、動き辛いことになった。
しかし、補償も支援もないので、注意して働かざるを得ない。
秋雨前線の影響で、湿気が溜まるこの週末は、「剱岳を眺めるツアー」に。
大日三山から称名滝へのルートは多少の雨でも行けると踏んだ。
剱岳は登って良し、眺めて良し。
今回、参加された2人は、今まで剱岳はそれぞれ一緒に20回以上は登っているだろう。
しかも、ほとんどバリエーションルートから。
過去に登ったルートを回想しながら、剱岳を眺めることは楽しい。
チングルマの綿毛と、バックは翌日スタートする奧大日岳。
雷鳥荘のカキ氷はすっかり病み付きになりました。
さて、翌朝は霧雨で風が強く、予定通りに行くか、かなり迷いながら辞めました。
稜線で雷雨、風雨に遭う可能性大で怖かった。
室堂へ行ったら中止した登山者がたくさんいた。
我々3人がライブカメラに映り込む(笑)
我々は八郎坂を降りて称名滝へ。
木道や八郎坂は濡れてズルズル。
標高が下がると暑い!
慎重に降りて称名滝へ。
称名滝は日曜なのに、観光客も少なかった。
下山してクルマに乗って15分くらいで雷雨が来た。
この不安定な天候はガイド泣かせではあるが、怖がるべきを怖がり、その中で最大限楽しむことが大事だと思う。
そのことを理解している方々と山をご一緒できることはとても有難く感謝しかない。
Facebookの過去投稿
昨年の今日はこんな秋晴れ。
源次郎尾根から剱澤小屋へ戻っての一枚。
ご一緒させていただいた坂本さんの写真。
過去は美化されるが懐かしいですね!
2021-08-22 14:22
剱岳体験学習 [剱立山]
今回のガイド依頼は、「息子が進路を真剣に考える時期に入り、剱立山で貴重な体験をしてもらいたくガイドをお願いしたい」ということで、高校二年生男子に剱岳登山を体験してもらうガイドを受けることになった。
お盆の長雨でガイドの仕事は一週間休業で、久しぶりに家から山へ向かう。
剱岳がようやく富山市内から眺められる好天が来た。
「登ってこい」と言わんばかりに!
アルペンルートはガラガラ、室堂もガラガラ。
富山アラートステージⅢ、蔓延防止等重点措置が効いているのか。
父子と合流し、剱御前小屋を越えて、少し霞んだ剱岳と御対面。
剱岳を初めて見て、「オー!」と圧倒された様子。
翌朝、父は剣山荘にステイ。
息子と二人で別山尾根に向かう。
星空の美しさに感動していたが、私にはそんなことはどうでもよく、まとわりつく湿気が気になって仕方ない。
快晴なのだが、数時間後に雨が降ることは容易に想像できた。
前剱で五龍岳から日の出を見て感動していた。
嫌な色だ。
鎖場を快調にクリアして、前後には他パーティもいない。
タテバイを登っていたら…。
ザーッと雨が降り出した。
風もかなり強い。
この子は登山経験はあまりないけど、マンツーマンだし、体力は有り余っているのでそのまま山頂を目指す。
風が強かったので黒い雨雲が飛び、隙間から景色も見えた。
剱岳別山尾根は下山が核心。
「頂上で喜ぶんじゃない」と言ってあったので、しっかりと下山に体力と集中力を残しておいてくれた。
びしょ濡れのヨコバイ、ツルツルのハシゴに気をつけて、平蔵ノコルまで降りたら、雨も上がり、気温も上がってきた。
でも、また降ったり止んだりを繰り返すだろう。
読みづらい天候だが、剱岳では良くあるパターン。
与えられたチャンスを的確に捉えて、ヤバくなったらさっさと逃げるのだ。
無事に剣山荘へ降りたら、父と涙で抱き合っていた。
やはり、まだ子供なんだなぁ。
この剱岳体験が進路にどう影響を与えるかはわからないが、ひと夏の思い出にはなったことだろう。
剣山荘で、もう一泊する親子と別れた。
別れ際に息子が「本郷さーん、楽しかったよー!」
夏の剱岳でいつも危惧していることがある。
親子連れの存在…。
剱岳へのチャレンジは素晴らしいと思うのだが、不安を感じることが多い。
この日も小学校二年生と六年生、別に小学校二年生を含んだ親子パーティが2グループいた。
なんで、学年までわかったかと言えば不安を感じ、心配でそれぞれ声をかけたので。
親は見た感じ、両方とも剱岳は初めての雰囲気。(迷いながら歩いているのですぐにわかる)
雨で濡れた鎖は、子供の小さい手では怖いと思う。(握力70を超える私でも濡れた鎖は怖い)
ツルツルになったハシゴは子供の小さい手ではしっかり握れず、大人より遥かに怖いだろう。
ランヤードもロープもなく、休むこともできないだろう。
親子連れが夏の剱岳別山尾根で事故を起こしたという話は、私が聞く限り知らないのだが…。
子供達は、相当怖い想いをするだろうと予想する。
「タテバイ、びしょ濡れになってますよ」と親達に伝えたが、気にする様子もなく、益々心配になる。
ひとりで剱御前小屋に向かっていたら、県警ヘリが現れた。
すれ違った子供達のことが気になって仕方がない。
何もないことを祈る。
子供達の剱岳チャレンジを応援したい
このブログを読んでいる方の中で、もし子供を剱岳に登らせようと考えている方がいらしたら是非御相談ください。
ガイドを頼まなくても、無料で詳しくアドバイスします。
もし、ガイドを依頼されるならガイド料無料は難しいですが、御負担掛からないよう相談に乗らせていただきます。
きっと、楽しんでいただけると思います。
顔は怖いけど優しいと思います。
剱岳チャレンジを怖かっただけで終わらせて欲しくないと思っています!
2021-08-20 18:48
季節の移ろい [剱立山]
8月10日から入山予定の剱岳ガイド。
8月11日の天気が良いのは誰にでもわかることだが、10日の風雨があまりに酷い中を入山するのは憚られた。
8月12日は晴れではないが、おそらく別山尾根なら問題なく登れる。
快晴の8月11日に入山し、剱岳の姿を堪能していただき、12日に登ることとした。
結果はどうなるかわからないが…。
ミクリが池でお客様と合流。
一週間ぶりの室堂だったが、あまりに季節が変わっていて驚いた。
全ての空気が入れ替わり、すっかり秋の風。
着てくるウェアを間違えた(涙)
先週は、「練乳イチゴかき氷」と騒いでいたのに、今回は「おでん」「スキヤキ」と騒いでいる。
チングルマもすっかり綿毛だらけ。
この方も「えび寿司」イチオシ。
稲荷寿司も美味しい季節になった。
さて、8月12日は…。
晴れではないが、まぁまぁのコンディション。
タテバイも誰もいないので、撮影しながら登る。
霧雨降る剱岳山頂も剱岳らしくて、良いではないか。
景色も何も見えないが。
下山しようとしたら、「本郷さん?」と声を掛けられた。
2019年末に早月尾根で前後したパーティの女性だった。
吹雪の中、我々は早月小屋で敗退したが、彼らはアタックに出てリーダーが転落行方不明に。
我々はガイドパーティなので敗退を選んだが、私も山岳会時代なら迷わずアタックに出るだろうというコンディションだった。
私もその後の成り行きで、立山川の捜索に関わったのだが、ほぼ諦めムードの中、数ヶ月後奇跡的に発見された。
あれからコロナ禍もあり、いろいろ山を続けるには困難だっただろうが、再会出来て嬉しかった。
あんな悲惨な事故が起きた後も、夏山とはいえ単独でテント背負って剱岳を登り続けていることは素晴らしい。
彼女は遭難を通じて学ぶことがあったのだろうと話をしていて感じた。
山は危険と隣り合わせだが、謙虚に危険を危険と認識することは難しい。
ベテランほど意固地でプライド高く、事故を起こす前に、認識することは難しくなると感じる。
遭難事例から学ぶことは多い。
どんな優れた人でも遭難するし、人は必ず間違える。
次は自分かと常に戦々恐々している。
剣山荘から剱御前小屋へ向かっていると雪切している方たちがいた。
秋になるのに、まだ雪切しなければならない剱界隈は凄いところだ。
雪切してくれる剣山荘スタッフ達に「ありがとう」と言って、今日も無事に下山できた。
2021-08-12 17:51
追悼 [マイライフ]
廣瀬憲文さんが滝谷で墜落事故。
そのニュースを聞いた時は、またすぐに復活するだろうと思っていた。
インスポンで落ちた時も再起不能と言われながら、見事に復帰された。
殺しても死なない。
廣瀬さんは、そういう人だと思っていた。
私が東京に住んでいた頃には、公私共に大変お世話になった。
日和田は、私の自宅から20分くらいだったので、ほぼ毎週頻繁にクライミング講習をやっていた。
ここで廣瀬さんと会う確率は50%を超えていたのではないか。
声が大きく、いたら何処にいるかすぐにわかる。
そして「歯に衣着せぬ」とはこの方のためにあるような言葉だ。
情けないクライミングをしていたら、誰の客であろうとも、大声で叱り、優しくムーブを教えてくれる。
「あと、5cm右に右足乗せて、目の前にあるアンダーを右で取る。そーそーそー!」
私はムーブは細かく言わず、自分自身で考え、身体に染み込ませろというタイプだったので、これには苦笑するしかなかった。
でも、そのくらい親切で困った人を放って置けない人だった。
私が韓国インスポンへガイドに行く時は、いつも現地状況を優しく教えてくれた。
廣瀬さんとの想い出は尽きない。
廣瀬さんはクルマを持たない人だったので、家まで送ると必ずお土産をくれた。
アイスアックスを研ぐ道具は、未だ廣瀬さんからいただいたものを使っている。
私がニューモデルのアイスアックスを手に入れると「俺が研いでやる」と言って、日本刀のようになって返ってくる。
人を殺すわけじゃないから、ここまで研がなくても…と思うと。
「ガイドが硬い氷に苦労したら困るだろう」と親切にやってくれるのだ。
2010年に私が富山へ帰り、ガイドのベースを剱岳に絞ってからは、会う機会は減ってしまったが、小川山や山小屋で会う度に私のことを心配してくれていた。
近年、私が膝腰を悪くして、クライミングから離れてからはお会いする機会もなく、最後はいつだったか忘れてしまった。
また、天国で再会したら、御指導ください。
いろんなことを優しく教えてくれて、ありがとうございました!
2021-08-10 10:14
かつての路を訪ねて [北アルプス]
佐々成政伝説(諸説あり)、立山新道跡など歴史とロマンの路として、一度は通過してみたかった針ノ木古道。
過去にも何度か計画していたが、なぜかその度に台風到来で中止してきた。
しかし、今回は台風10号と9号の隙間の二日間を絶妙なタイミングで捉えることができた。
今回は扇沢からスタート。
なんだこれ?
立山側の地味さに比べたら、こちらは華やか。
黒部ダムの虹もひとつの演出に思える。
黒部ダムから平ノ小屋までは平坦ではなく、アスレチックジムが微妙に疲れる。
初めて来た、平ノ小屋。
釣りキチ三平のモデルらしい御主人様はユニークそのもの。
とても、詳細はここでは書けません。
岩魚の刺身は臭みもなく天下一品。
さて、翌朝は黒部湖横断の舟からスタート。
気さくな船頭さんとお話しながら、湖面の穏やかさを楽しむ。
さあー、いよいよ針ノ木への途が始まる。
登山というより、沢歩きのパートが多く、渡渉と薮漕ぎの連続。
慣れない人はかなり消耗するだろう。
特に船窪分岐からは不明瞭で、山と高原地図に実線ルートで示されていることには見直しが必要だと思われる。
エスケープの困難さを考えれば、気軽に入れるルートではない。
もちろん、スマホの電波も入らないので救助依頼も困難だ。
針ノ木峠が近くなると急登の中にある御花畑に癒される。
針ノ木小屋が近づくに連れて、喧騒も近づく。
誰にも会わない静粛な山旅もこれで終了。
ずーっと、けたたましく喋り続けているグループにうんざりして、休憩もそこそこに扇沢へ下降開始。
今までの道程から比較したらハイウェイ。
針ノ木雪渓は意外にも硬く、アイゼン持たない我々は苦労した。
平ノ小屋を出てから11時間半。
水量や経験、体力で所要時間は大きく変わるだろう。
たった二日間だったが、とても濃い時間だった。
たぶん、私はこれから何度も訪れることになるだろう。
今回、扇沢に向かう途中で、非常に関係の深かった先輩ガイドが滝谷で死亡した報を聞いた。
失望落胆を抱えたままの山となったが、彼が私に教えてくれたことを思い出しながらの山は忘れられないものとなった。
奇しくもこの日は「山の日」。
山って、なんなんだろう。
山岳ガイドって、なんなのかを考えさせられた日だった。
2021-08-09 08:05
秋近し剱岳 [剱立山]
8月に入り、酷暑が続きます。
室堂の石畳は暑く、雷鳥坂では茹蛸状態。
剱御前小屋からは剱岳は拝めず。
翌朝は不気味な色。
こんな日は胸騒ぎがして、なにも起こらないことを願う。
別山尾根は空いていて、一切渋滞なし。
タテバイでは皆さん緊張していたが、スムーズに通過。
山頂は看板が多過ぎて、どれを選ぶかで揉める。
山頂に吹く風は爽やかで、もうすぐ立秋であることを思い出す。
ここにあった水晶玉はいつの間にか無くなった。
どこかに落ちていったのか、誰かが持ち帰ったのか。
昨年まではあったのだが…。
今回も楽しい3名のお客様に恵まれた。
このような天候だとガイドがいなくても別山尾根は登れるのだろう。
この日も私以外、ガイドはいなかった。
しかし、剱岳に纏わる話や歴史、印象的な出来事をできる限りお話して、剱岳に存在する多くの魅力を知って欲しいと思っている。
安心安全なガイドは当たり前。
単に登頂して下山するだけではない何かを持って帰って欲しいと強く思う。
別山尾根を登るだけでは剱岳の魅力を知ることはできない。
別山尾根からスタートして、剱岳に惚れてたくさん通っていただきたい。
そして、このガイドにお願いして良かったと下山後に思っていただけたらとても嬉しい。
今回も剣山荘さんにお世話になり、快適に過ごすことができた。
三田平でバッタリ。
剱人の著者 星野秀樹
あのインタビュー以来の再会でお互いの近況を報告しあった。
雷鳥坂を下山中、本降りの雨に遭いずぶ濡れ。
雷鳥荘に飛び込んで、カキ氷。
練乳イチゴがお勧め。
暑さも吹っ飛ぶ美味さ。
温泉、生ビール、枝豆…。
長い一日が終わる。
帰路のミクリが池は立山を映した。
皆様、お疲れ様でした♪
2021-08-04 12:47