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やり残した宿題 [剱立山]

2023年夏 暑かった8月も今日で終わる。
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8年前の2016年は東京銀座で「剱岳への誘い」という机上講習会を月イチで開催していた。
 
私の話を熱心に細かくメモを取っている女性がいた。
講習終了後もたくさんの質問をしてきて、聞けば小学生と中学生を連れて剱岳に登るのが夢だという。
 
次の講習には子供達も連れて来た。

その後、Facebookで繋がり、2017年夏に親子で剱岳へチャレンジすると聞いた。
その入山時に室堂で親子3人とバッタリ会い、いろいろと注意点をアドバイスした。

しかし、後に雨のため剣山荘で敗退したと聞いた。
 
その後、もう一度トライしたが叶わず。

それから親子にも受験やら、コロナ禍があったりで夢を諦めたのかなぁと感じていた。
 
私はこの親子のことが何年経っても、ずっと頭に引っかかっていた。

今年8月に母から連絡があり、憧れの剱岳を憧れのガイドと登りたいと…。
 
大学生になった息子達とスケジュールを調整して夏休み最後に時間を作ることができた。
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久しぶりに再会した子供達は、すっかり大人になっていた。
 
剣山荘を暗いうちに出発。
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ついにやり残した宿題を終える時がやって来た。
 
成長し、元気な子供達に不安はない。
母をみんなで叱咤激励しながら登ると夜も明けてきた。
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後立山がオレンジに染まる時間帯。
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前剱の肩に出ると初めて巨大な剱岳本峰と対面する。
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これから登るルートが良く見える。
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前剱山頂から日の出を眺めながら、これから待っている試練への準備を行う。
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天候は文句なし。
涼しく快適な朝の時間帯に登降する。
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さぁ正念場。
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タテバイもクリア。
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遠くから富士山も応援してくれているようだ。
 
息子達は「なんで、日本海にある山から太平洋にある山が見えるんだ?」と不思議がっていた。
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ついに剱岳に到達。

しかし、剱岳の試練は下山にある。
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疲れ果てた身体を奮い立たせて頑張る。
 
登り以上の時間を掛けて、一歩一歩降る。

剣山荘に着いて握手!
カップ麺食べて、ゆっくり休んでから、雷鳥荘を目指す。
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以前は剣山荘までしか来れなかったが、ようやく剱岳に登ることができた。
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今日往復した長い道程。
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ここで剱岳とは暫しの別れ。
 
剱御前小舎を後にして、長い雷鳥沢を降りて、階段を登り返す。
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雷鳥荘に着いて、初めて母が涙を見せた。
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剣山荘を出発してから12時間近くが経ち、剱岳チャレンジの長い一日は終わった。
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夕焼けに彩られた立山も祝福してくれているようだ。

温泉に入って、乾杯して、雷鳥荘の一夜を過ごす。
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今朝、雷鳥荘で親子と別れた。
「一生モノの思い出になりました」と母から。
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帰宅して、息子達から貰ったギフトカードを開けたら手紙が添えてあった。
 
この親子が私を選んだことを考えたら、嬉しくて涙が止まらなかった。

今日まで山岳ガイドとして生きてきて良かったと心底思えた日だった。 
 
2023年8月31日

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