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仲秋の候 [剱立山]

あと僅かで、9月は終わる。
今週のガイドは全て中止となったので、私の夏シーズンは終わった。
 
とにかく暑かった今シーズン、ようやく涼しくなり、仕事もなくなり気が緩んだのか、一気に秋バテが来た。
 
季節の変わり目、皆様も体調崩されませんように!
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剱岳はそろそろ山小屋を閉める準備が始まり、今後の登山者も極少数となるので続々とアルバイトスタッフも下山していく。
 
毎年のことだが、賑やかだった夏の喧騒が遥か昔のようで寂しさを感じる時期だ。
今年の夏はコロナ禍の影響から脱して登山者が山へ殺到するはずだった。
 
しかし、期待していたほどではなかった。
自分自身のガイド業務は巡り合わせが悪かったのか、悪天候で中止や、様々な理由でガイドキャンセルが非常に多く、例年よりかなり活動できる日が少なく経済的にも精神的にも痛手なシーズンだった。
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でも、ひとつひとつの山行は深く想い出に残るものばかりで、お客様の顔も表情も一人ひとりはっきり思い出すことができる。
 
このようにガイド山行の間隔を開けて仕事をした方が良い歳になったのだろうし、自分の能力を有効に引き出せたように思う。
 
若い頃のように連日厳しいルートをガイドするパフォーマンスもなくなったし、連続したガイド日程では、どうしてもガイドクオリティは落ちるものだ。

下界に降りて休みを入れて、新鮮な気持ちで登山口からお客様と一緒に山へ向かい、ガイドルートを登って下山口まで一緒に帰るというのが、あるべき本来のガイドスタイルであろう。

山小屋集合山小屋解散は(お客様が希望する場合は別にして)お客様にメリットはない。
ガイドの勝手な都合だけだ。
  
剱沢雪渓の状態が良かった頃は、真砂沢ロッジで集合解散して、連日チンネやⅥ峰フェースなどをガイドしていたが、神様のような大先輩に酷く怒られた事がある。
「あのな。ガイドというものは、登山口でお客様を迎えて、下山するまで送り届けるのが仕事やぞ!」
ガイドとしての基本姿勢がなっていなかったし、自分は何様だったのかと過去を反省している。
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今シーズンは槍穂高へも数度ガイドに出かけた。
 
ここ数年は、剱岳ばかりガイドしていたので、ブランクもあったが、こちらのルートや岩質も思い出して段々と楽しくなってきた。
槍穂高には剱岳にはない魅力もあるし、槍穂高を登る中で新たな剱岳の魅力も感じることができた。
  
十数年ぶりに訪れた山小屋も私のことを覚えていてくれて嬉しかった。
 
来シーズンも積極的に槍穂高へ向かいたい。
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この本は1973年に北日本新聞社出版部より刊行された。
昭和48年初版の本ということは、私が11歳の頃で昭和の登山を読むことができた。
 
今では手に入れることは難しいが、富山の岳友が父から譲り受けたものらしく「自分が持っているよりも、本郷さんに持っていて欲しい」と2018年に戴いたものだ。
 
ジムニーJA11と100系ハイエースをこよなく愛する男で、私もジムニーJB23と200系ハイエースに乗っているのでメンテナンスや改造を手伝ったりしてくれた。
 
私の講演がある時は良く顔を出してくれていたし、たまに二人で飲みに行ったりもしていた。
よくSNSでやり取りしたりしていたが、最近反応がなくなり気にしていたところだった。
 
先週、剱岳早月尾根を下降中に富山の映像会社の社長とバッタリ会い、共通の友人である彼の訃報を知った。
 
社長も不審に思い、最近家族に連絡を取ったところ知ったという。

秋は失うものに思いを馳せる切ない季節だ。
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中秋の名月が過ぎると季節は一気に進む。
 
明日からは10月。
高い山では初冠雪となり、一気に冬へと加速していくだろう。

季節の変わり目は何かとセンチメンタルになりがちだが、晩秋、初冬のガイドスケジュールも決まってきて、素晴らしいお客様と素敵な場所で楽しい時間を過ごすことを楽しみにしている。

試練と憧れ [剱立山]

「試練と憧れ」

憧れる心に試練があり、試練を超えて其の道を歩き続けん
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この岳で命を失った岳人を偲び、これから登る人々の安全を祈願したこの碑を通る度、気が引き締まる思いだ。
 
初日は早月小屋までずっと雨。
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びしょ濡れになった身体を乾かせる山小屋の存在は大きい。
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冷えた身体に、豚汁が美味い。
 
早月小屋の豚汁は大好きだ。
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翌朝は快晴で、暗いうちに出発。
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2800m上にある崩壊地、来シーズンは違うルートを通ることになるだろう。
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山頂が近くなると風が冷たく、グリーンシーズンの終わりを感じる。
 
下界はいつまでも暑いが、山の夏は短い。
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山頂はカオス。
 
我々が着いた時はまだ落ち着いたタイミングらしく、少し前は20分待ちの行列ができていたらしい。
 
一生に一度の想い出作りなので、わからないでもないが、1人づつポーズを変えての撮影は時と場を考えたいものだ。
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もう一つの撮影ポイントも同じように混んでいる。
誰も堕ちないと良いのだがと、いつも心配になる。
このポイントの写真は、私もSNSで良く使っていたので、自責の念に駆られる。
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今回も親子の夢を叶えるお手伝いが出来て良かった。
 
剱岳初登頂を早月尾根からは素晴らしいことだ。
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賽銭箱が新しくなった。
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早月小屋に戻り、三代目佐伯堅太郎君とまどかちゃんにシーズン最後の挨拶をして下山。
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早月小屋、今度来る時は雪が被っているだろう。
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高齢のお母様が終始登降に時間が掛かってたのだが、娘さんはとても元気だった。
しかし、1500m地点から急に娘さんの膝が笑い出し、脚に力が入らなくなり、支えなければ、座り込んで立てなくなった。
 
初日に馬場島から松尾平へ向かう途中親子の歩き方を見て、「その歩き方では大腿四頭筋がダメージを受けて、降りる時には歩けなくなるよ」と山での歩き方の基本を説明しながら登ったのだが、長年培った歩き方は一日で治るはずもない。
 
お母様は凄い日数の山行をこなしているが、ベテランほど自己流の歩き方であることが多い。
私のリピーターのお客様でも、どうしても悪き癖を治せない人もいるし、身体に染み付いたものは、なかなか取ることは難しい。
 
早月尾根のような大きな標高差においては、歩き方は最も重要だ。
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ザックと腰をロープで支えなければ、膝カックンで立ち上がれない状態。
 
ザックを持って降りたり、本人を背負って降りた経験は過去にも数度あるが、それをやったら本人は深く傷付き、剱岳に嫌な想い出しか残らなくなるのだ。
 
本人も頑張りたいと言うので、どれだけ時間が掛かっても良いからと持久戦となった。
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ようやく馬場島に到着。
 
12時間30分の長い一日の行動が終わり、涙を流して喜んでいた。
人生最大の試練だったそうだ。
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今回習った歩き方を練習して、身体を鍛えて、今度は違うルートから再び剱岳を登る約束をした。
 
「快晴の中、憧れの剱岳を親子で登ることができたこと、一生の思い出になりました」と聞いて、今回も貴重なガイド経験を積ませていただいたのだと思った。
私の仕事はこの言葉に全てが救われる。
 
同行してくれたMさんも、サポートありがとうございました。

剱岳敗退記 [剱立山]

剱岳北方稜線に行って以来、他山域を登っていたので、もう10日も剱岳山頂を踏んでいない。
 
10日も剱岳から離れているとなんだか寂しい。
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黄色い絨毯の雷鳥坂を訪れたが、涼しくて気持ちいい。

9/20からは、しばらく各社悪天候予報で統一しているが、9/21早朝にチャンスありと思い、剱岳ガイドを催行した。
おそらく、雨は降らず、風は強いけど対応できるはずだと考えた。
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いつも一番速く染まる板屋楓は少し枯れ気味。
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その辺りには、太った雷鳥だらけ。
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良く食べてるから^_^
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剱岳は隠れているが、久しぶりの風景が懐かしい。
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剣山荘に着いたら、シャワー浴びて生ビールをいただく。
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今夏の剣山荘女性スタッフ達も、下山時期が近づき、この日でお別れになる皆様と一人づつ記念撮影をする。
 
毎夏のことだが、なぜ剣山荘には神対応ができる素晴らしい娘達が集まるのだろうか。
類は友を呼ぶということなのだろう。
 
剱岳という厳しい山の麓で日々癒しを与えてくれて、ありがとう♪
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翌朝は出発しようとしたら予想していない雨が降り出し、しばらく待機してから5時近くになって出発。
 
湿った温かい空気感に、気持ち悪さを感じる。
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一服剱からの前剱。
 
強風は覚悟していたが、濡れた岩に慣れていないお客様方だったのでスピードが上がらず、山頂を諦めて敗退することにした。
 
無理して登ってしまったら、下山時は地獄を見ることになるのは間違いないと説明した。
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灯が眩しい剣山荘に戻る。
 
室堂へ帰る途中の別山乗越では身体が持ち上がるほどの強風が吹く。
 
やはり、時間経過と共に状況は悪化した。
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雷鳥沢の黄色は更に進んだようだ。
 
残念ながら、来夏のリベンジを誓って立山駅で解散。
 
今シーズン初めての別山尾根敗退だった。
天気の読み間違えかもしれないけど、一瞬の登れるチャンスを掴んできた経験をうまく活かすことができなかった。
 
コンディションと力量が合わない中で無理することは良い結果には繋がらない。

山岳ガイドという仕事はつくづく簡単ではないと改めて感じる。

シルバーウィークガイド [沢]

9/16からスタートしたシルバーウィーク。
 
シルバーウィークとは知らずにうっかり山小屋予約したら、予定通りに予約できず…。
 
予定を変更して、ガイドスケジュールを組み直し。

初日は、立山の一ノ谷へ日帰り。
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水は冷たくて気持ちいい。
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今まで見たことがない少ない水量で寂しいので、釜にどんどん浸かって楽しんでいただいた。
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そして2日目からは赤木沢へ。
太郎平小屋への登山道は綺麗になっている。
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ラーメン食べてから、薬師沢小屋へ降りる。
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大和景子様と飲むために、とっておきの飛露喜を持ってきた。
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小屋のテラス席で黒部川を眺めながら、飲む酒は美味い。
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夕食は名物角煮定食。
山渓の記事を読んでから、余計有り難みを感じる。
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夕食後は神戸牛A5の焼肉を食べながら一献。
 
人生を語る。
 
翌日のために早く就寝。
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翌朝は予定通り、赤木沢へ。
 
水量が少ないので、黒部川は全て水線突破して快適に進む。
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赤木沢出合にスムーズに到着。
 
今回も岡ガイド同行で楽しい時間を過ごせた。
 
沢グッズ「渓流」を担当する岡さんから、来シーズンの商品とか見せてもらったり、こちらから商品の改良アイデアを出したり、とても有益な機会でもある。
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水量が少なく、ワンランク優しい赤木沢だが、やはり天国であることは間違いない。
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笑顔が絶えず、楽しい沢登り。
 
素敵な方々と素敵な場所で過ごす時間はとても素晴らしい。
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釜があれば、どんどん浸かって身体を張って楽しむ。
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大滝も水が細い。
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夢のような時間はいつかは終わり、中俣乗越に出る。
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折立までの下山は長い。
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下山したら、えび寿司へ。
 
無くてはならない貴重な時間。
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今回もお世話になりました!
 
そして、9/19は富山百山ガイド。
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どこへ行くかは、お任せのミステリーツアー。
 
暑くて疲れ気味なので、短い元取山の周回コースへ。
  
さて
 
明日からは最近留守がちな剱岳へ戻ります!

裏剱と奥剱 [剱立山]

北方稜線を二回転する予定だったが、一回目の際に剱岳から北方稜線を小窓ノコルまで降りた所で、小窓雪渓を通過できず池ノ平山南峰を登った。
 
現状では、池ノ平山と小窓ノコル間をガイドルートとして使うのは危険だと感じたので、北方稜線の中止連絡を入れたら、お二人から裏剱だけでもというお話をいただき嬉しい限り。
 
素敵な方々を素敵な場所へご案内することにした。
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裏剱、奧剱、そして剱岳東面を眺める頂上を踏まない剱岳展望ガイドとした。
 
初日は室堂から剱沢を経て真砂沢ロッジへ。
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雷鳥坂を登っていたら、上から「本郷さ〜ん」と声がした。
昨夏の剣山荘スタッフと再会を楽しんだ。
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剱沢を降りると秋風が涼しい。
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いつも懐いてくる雷鳥も冬支度かな。
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少しずつ、赤いものも目立つようになってきた。
 
剱沢下降は、平蔵谷出合で一度雪渓に降りれるが、そろそろ亀裂が目立つようになってきた。
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夏道のスラブ帯には残置ロープと杭も設置されている。
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長次郎谷出合は右岸から左岸に雪渓を渡ることができる。
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真砂沢ロッジで乾杯。
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夕食を食べて早めに就寝。
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2日目の朝は四ノ沢で迎える。
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仙人新道から眺める小窓雪渓は2日前より更に細くなったようだ。
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モンローの唇も涎もない。
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しかし、ハイジの世界は気持ちいい。
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2日ぶりの山頂。
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剱岳北面の大展望。
小窓尾根の全景が見渡せる。
 
そして、北方稜線も池ノ谷ガリーから下のルートが見える。
 
来年夏にリベンジを約束して、日程も決めた。
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岩峰に立てば、富山湾と富山平野を見渡すことができる。
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仕事でなければ、昼寝したい場所。
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仙人池ヒュッテで檜風呂に入って気持ち良くなる。
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仙人池でラーメンを食べるなんて贅沢はなかなかできるもんじゃない。
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夕方にちらっと裏剱。
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夕食は「今まで山小屋で食べた中で一番美味しい」とのお客様の声に激しく同意!
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最終日は黒部ダムまで遠いので、暗いうちに早出。
 
見送っていただける仙人池ヒュッテスタッフに感謝しながら歩いていたら、仙人池ヒュッテの上に後光が刺す。
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仙人新道から眺める裏剱も素晴らしい。
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裏剱に別れを告げて、二股の橋を渡る。
この橋もあと3週間余りで撤去される。
まさに光陰流水だ。
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四ノ沢の鎖場を過ぎて、剱沢を渡ればハシゴ谷乗越に向かう。
 
剱岳の北面から東面に周り込む。
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背後には八ツ峰Ⅰ峰がデカい。
下にはマイナーピーク東面スラブ。
真砂沢ロッジの先代、佐伯成司さんの頃に整備に行った。
 
黒部別山にも2回、薮の時期に頑張って登ったが、また自然に戻ってしまっただろうか。
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ハシゴ谷乗越から内蔵助平を目指す。
そろそろ飽きて嫌になって来る頃、懐かしい文字と出逢う。
全然、「もう少し」じゃないんだけどな(笑)
 
北陸新幹線ができる前は東京から、いつもこの路で剱岳に通っていた。
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丸山東壁が近くなると、ロープやハシゴが出てくる。
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黒部の巨人「丸山東壁」中央壁
辛かった想い出や楽しかった想い出、パートナーが宙吊りになったこともあったし、眺めていると複雑だ。
 
なんか自分の思い出話みたいになってしまったが、いろいろお見せしたい場所が点在している今回のルート…素晴らしい路だ。
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ようやく、黒部ダムが見えてきた。
この登り返しも暑くて長い。
剱岳本峰を踏まなくても、展望だけでも充実した登山をたっぷり味合わせてくれた。
 
このルートは登山というより、秘境の山旅という雰囲気がピッタリだ。
別山尾根だけを登って剱岳を語ることの愚かさ、そして剱岳のデカさを知るためにも是非一度歩いて欲しい。
 
ご参加いただいたお二人に感謝しつつ、来夏の北方稜線を楽しみに待とう。

剱岳北方稜線 [剱立山]

「剱岳北方稜線」なんとカッコいい響きだろうか。
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今回は剣山荘から剱岳本峰を経て北方稜線へ向かう。
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初日の入山は雨具を使用。
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剣山荘でリラックスタイム。
針山地獄Tシャツは売り切れです。
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翌朝、出発しようとしたら雨が降り出し、一度部屋で待機後に再出発。
時々パラパラと降る雨で岩場と鎖は滑る。
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剱岳でお参りしてから北方稜線へ。
 
長い付き合いのお客様2名様で、体力、技術、メンタル申し分ない。
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この2人なら濡れた北方稜線でも安心して歩くことができる。
雨が降る北方稜線は誰もいない。
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時々雨が止むと景色は素晴らしい。
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しかし、池ノ谷ガリーを降りる頃にはまた霧雨で視界は悪い。
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三ノ窓もチンネ、ジャンダルムがガスの中。
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発射台を登る。
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ようやく雨が止んだ。
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小窓ノコルには10時到着。
午前中には小屋に着くなと思ったら、小窓雪渓はとてもじゃないが通過できる状態ではない。
 
小窓から池ノ平山は10数年前に2回登り降りしたことがあるが、難易度が高いことは解っていた。
しかし、今回の2人なら大丈夫だろうと、池ノ平山を登ることにした。
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再び霧雨が降る中、悪い登攀と藪漕ぎの繰り返し。
時々現れる残置ロープは落ち果てて使えない。
浮石多数、部分的に逆層、脆い山肌、急傾斜…。
久しぶりの池ノ平山はかなり道が悪くなっていて、道とは言えない状態だ。
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今まで歩いて来た北方稜線のルートがハイウェイに思えるくらい厳しい。
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小窓から池ノ平山に登るだけで3時間掛かった。
 
某地図にこのルートが破線で載っているが、CTを信じたら遭難に繋がる。
池ノ平山を回ってもプラス1時間なんて単純に考えてはいけない。
相当悪場に慣れている人でなければ安全に通過すること自体が難しいだろう。
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仙人池ヒュッテまで頑張っての檜風呂は最高だ。
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この景色を観ることなく、シーズンは終われない。
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最終日、お見送りしていただいた。
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南仙人山に朝日が登る。
 
仙人新道を降りながら、昨日歩いた行程を振り返る。
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氷河剥き出しの小窓雪渓は通行不能と考えるべきだろう。
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三ノ窓。
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そして池ノ平山。
 
見た目だけは穏やかだ。
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真砂沢ロッジで美味しいコーヒーをいただき、ゆっくり寛がせていただいた。
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剱沢は長次郎谷出合と平蔵谷出合は雪渓に乗れるが、夏道を使用する。
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足場も作ってあり、感謝!
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平蔵谷出合も亀裂が多く、源次郎尾根取付きまでも距離ができていて、暗いうちは慣れた人でないとわからないだろう。
  
すっかり、剱岳周辺の秋は進んでしまった。
水量も以前の10月の様子だ。
 
翌日から剱岳北方稜線をもう一回転ガイドする予定だったが、中止した。
池ノ平山をアプローチとする北方稜線ガイドは現状あり得ないと考えた。
 
本来の北方稜線は剱岳から烏帽子、鋲ヶ岳までの長大な距離なのだが、ガイドルートとしては小窓雪渓を通過する短縮ルートが慣例となっている。
 
今回、久しぶりに小窓から池ノ平山へ登ってみて、現状では安全なルートではなく危険性が高いルートであると感じた。(今後通過する登山者が増えたり、整備が入って、ルートが安定する可能性はあるが)お客様に傷を付けるようなルートはプロの山岳ガイドとして取るべきではないというのが自分の考え方だ。
 
ガイドさん、それぞれの考え方があるので、どの考え方が正解かはわからないが、私のお客様には多少の傷やケガは承知の上で…なんて方はいないし、現状ではリスクが高すぎるルート選択だと思えるので、今シーズンの剱岳北方稜線ガイドは終了とする。

槍ヶ岳を巡る6日間 [北アルプス]

短い夏も終わり、少しずつ秋へ向けて季節は進む。
 
9月1日から槍ヶ岳を巡るガイドへ。
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北穂東稜から大キレットを越えて槍ヶ岳へというコースを二回転する予定。
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穂高連峰はとにかく明るい。
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懐かしい屏風岩を眺めながら涸沢へ向かう。
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久しぶりの涸沢小屋へ。
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支配人に忘れられてなくて良かった。
 
ジョッキパフェは8月で終わりだとのことで、生ビールジョッキにソフトクリームとした(笑)
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翌朝は陽が上がる前に、北穂東稜を目指して、北穂沢を上がる。
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ゴジラを越えて楽しい岩稜ハイキング。
 
北穂東稜は登り方次第で、一般道の南稜より短時間で快適に登れる。
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しかし、目指す槍ヶ岳はまだまだ遠い。
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大キレットへ向かう。
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本郷ピークを越えると先は見えてくる。
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大キレットが終わり通過して来た北穂東稜と大キレットを眺める。
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南岳小屋でチャンポンを食べて、午後の後半戦に備える。
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数え切れないアップダウンを繰り返し、槍ヶ岳までは簡単には着かない。
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お客様が転けて、ポケットに入れたiPhone14proがお釈迦に(涙)
気を落とさないように励ましながら槍ヶ岳に向かう。
 
槍ヶ岳山荘はまさかの播隆祭で大混雑。
受付してから穂先へ向かう。
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順番待ちしながら気長に待つのみ。
私の前はなんとナベカメラマン。
上高地で写真展をやってるらしいが本人がいたので丁度良かった。
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いろいろ話をしながら良い暇つぶしになった。
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こんなに待つのは、ディズニーランド以来かも。
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iPhoneを破壊した人だけ、ロープを繋いでいるのは、災いは続くものだから。
 
山頂はごった返しているので、写真撮って早々に引き上げる。
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長かった一日に乾杯!
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翌朝はモルゲンロートに輝く山々を見ながら下山。
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三日間の好天に恵まれ、良く歩いた。

そして、2回目。
天気予報は微妙だけど、山は行かなきゃわからない。
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弱い雨がパラパラ降る上高地を出発。
 
濡れた北穂東稜と大キレットをガイドする愚策は取らず、横尾山荘泊として悪場の短い槍ヶ岳を目指すことにした。
  
それが今回、我々パーティが選択すべき判断だと考えた。
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横尾山荘に泊まるので、急遽ホッピーさんも同行することに。

翌朝、横尾山荘を暗いうちに出発するが槍沢ロッジを過ぎた頃から雨が降り出す。
 
しかし、登るにつれて、急速に視界が開いて雨が止む。
 
晴れたり、雨が降ったり、忙しい天候だ。
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ヒュッテ大槍からはお客様2名と穂先へ向かう。
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紺碧の空を斬る槍ヶ岳。
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2人とも木村さん(笑)
左の方は75歳で、前回の槍ヶ岳は北鎌尾根からの登頂だった。
 
穂先から降りようとしたら、いきなりゲリラ雷雨。
一瞬にして、岩は濡れ下降の難易度は上がる。
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北鎌尾根は31回登ったのに、東鎌尾根は2回目だ。
 
濡れたら緊張感あるルートと感じた。
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ヒュッテ大槍へ戻って、美味しいものをいただく。
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黒ビールは最高だった。
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名物つけ麺は2800mを越える場所とは思えない美味さ。
 
夕食はパスタも出て、オシャレで美味しい。
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支配人で山岳ガイド資格も持つ旧知の井村ガイドと一献。
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楽しい夜は更ける。
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翌朝、お世話になったヒュッテ大槍から下山。
 
また、来シーズンたくさん来ようと思う。

6日間の槍ヶ岳ガイドが無事終了。
前半は快晴で大混雑。
後半は降ったり晴れたりの天候でガラガラの槍ヶ岳。
最近の登山者は天気予報にとても敏感で忠実だ。
天気アプリに登山の可否を委ねてしまう。
 
予定の行動ができなければ、その登山を失敗と考えてしまい、そして失敗を極端に嫌う登山者がほとんどのように感じる。
登山力を高めるためには、死なない程度に失敗を積み重ねて、そこから得た経験を蓄積することも大切なことではないかと思う。
 
自分の経験から言えば、予定外の登山行動ができなかった時の方が勉強になり、得ることが多かった気がする。
 
快晴の中、全てが予定通りに進んでしまったらむしろ物足りなさを感じてしまうくらいだ。
 
今の時代は失敗しないためのツールは豊富だが、使い方を間違えないようにしたいものだ。