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必ず夏は来る [剱立山]

ずっと雨が降り続く週で、唯一チャンスがありそうな木曜日。
予定を一日前倒していただいた。
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お客様は遠方にお住まいで70歳代。
急な予定変更は大変なことだが、快く応じていただいた。
 
初めてお会いする方だったが、絶対登れるだろうと思っていた。
初めての方にガイド依頼を受けた場合、メールのやり取りだけで、受けるべき仕事か否か解るようになった。
 
剱岳に憧れを持っているけど、同時に恐ろしさも感じている方はだいたい大丈夫。

今回は、年齢のこともあり、体力に自信がないということで、プライベートガイドをご希望された。
プライベートスタイルはガイドとの距離が近く、体力的にも安全面でも圧倒的に優位だ。

初日は歩き方やストックの使い方を講習しながら剣山荘へ向かう。
歩くなんて誰でもできるし、技術ではないと思われがちだが、歩き方から見直すことで随分と怪我や事故を防ぐことができるはずだ。
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水分補給、行動食、休憩、パッキング、軽量化などのこともお話しながら歩いた。
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剱御前小舎から剣山荘への雪渓は、最近の大雨で最上部はステップがなくなっている場所もあり、人によってはアイゼン要。
 
しかし、剣山荘スタッフが雨の中でも頑張って、毎日雪切りをしてくれているお陰で危険箇所には綺麗な階段ができているので随分と助かる。
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この時期は、花が綺麗に咲いているので、剱岳に登らずとも、剱沢へトレッキングするだけでもお勧めだ。
 
さて、時間に余裕を持たせるため、翌朝は暗いうちにヘッドランプで出発。
 
天候は高曇りで、風もあって寒いが、まず問題ないだろうと思う。
 
明るくなってから見えた剱岳に「あんなに遠いの〜」とお客様。
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「一歩づつ頑張って歩けば、向こうから近づいて来てくれますよ」と。
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怖いと言っていたタテバイも元気にクリア。
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気づけば、朝6時過ぎナイスタイミングで夏空満開の剱岳山頂へ。
剱岳は想い描いて頑張っている人には、とっても穏やかに迎えてくれる山だ。

上の写真は、偶然一緒になったガイド資格を持つ赤岳鉱泉スタッフに撮ってもらった。
聞けば前夜の剣山荘から同宿だったと言う。
「本郷さんのオーラが凄すぎて、声が掛けられなかったんです」って(笑)
 
山頂も賑やかになってきたので、下山開始。
ヨコバイ、平蔵ノ頭など、スムーズにパス。
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前剱まで降りて、いま登ったばかりの剱岳を仰ぎ見る。
 
一服剱を登ると剣山荘は指呼の距離。
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ようやくやってきた晴天で、この日はヘリ荷上げで忙しい。
 
剣山荘に着いて握手。
ようやく安堵の笑顔が見えた。
 
全く急いだわけでもなく、休憩もたくさん入れたのに8時40分に小屋へ帰って来た。
 
パッキングして、休んでから室堂へ向かう。
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剱沢野営管理所もヘリの荷上げ。
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剱御前小舎もヘリ荷上げ。
 
県警山岳警備隊の「つるぎ」も飛んでいて、この日の空は賑やかで、いよいよ夏が始まるなと感じた。
 
雷鳥荘には正午頃に着いて、素晴らしいスピードだった。
「歳だし、体力ないし…登れるか不安です」と言っていたのに。
「最高の二日間でした」と言われて、ガイド冥利に尽きる嬉しい日だった。
 
年齢だけでは人は計れないとつくづく思う。
また、お客様から勉強させていただいた。

かたや、私はと言えば…。
ようやく60歳を迎える若さなのに、情け無い限りだ。

2012年に腰椎椎間板ヘルニアになってから全てが狂ってしまった。
膝も麻痺して、クライミングから離れるしかなく、すっかりガイドスタイルは変わってしまった。
今年はさらに別なダメージも追加されて、自分の身体がなかなか自由にならない。

ということで、今夏も引き続き別山尾根と早月尾根主体で剱岳を案内していきます。

自分の過去や、他ガイドと比べて卑下していても何も生まれない。
今できることを粛々とやるしかない。
 
山から降りたら、時間が許す限り、筋トレ、ボルダリング…を継続して、来たる日を待つのみ。
 
私のガイド経験の中で、最高齢のお客様は89歳での西穂〜ジャンダルム〜奥穂。
74歳でのチンネ左稜線など…。
皆様の頑張りは素晴らしく、今でも思い出深いガイドだ。
 
私はまだまだこれから!
必ず夏がもう一度来ると思うことにしている。