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立山は冬へ [剱立山]

11月中旬となると最後の立山ガイド生活が始まる。

4月15日、立山黒部アルペンルートの全線オープンから7ヶ月。
 
春スキーガイドと剱岳残雪ガイドから始まり、夏の剱岳ガイド、秋はまたスキーガイドでシーズンを終える。
 
長いような短いような、シーズンクローズが近づくと寂しいものだ。
 
立山の始まりと終わりだけは見届けたくて4/15と11/30は、どんな天候でも必ず現場にいるようにしている。
 
2450mにある天空の別天地は富山の宝。
沢山のお客様に見ていただきたい。
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11/14から立山に上がる。
みくりが池はまだ凍っていないが、山は真っ白だ。
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新雪がたっぷり降って快晴の中、普通は行けない剱岳の絶景地へ。
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剱岳の存在は別格だ。
いつまでも変わらず、ここにあるだろう。
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この時期の立山では、いろんな仲間達と再会できて嬉しい。
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この頃はまだ雪は少ないが、素晴らしいロケーション。
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しかし、吹雪で予定通りの行動ができなかった日々もある。
 
こんな悪天候の日こそ、学ぶべることは多いはず。

結果だけを求めると近道したくなるが、うまく行かなかった時間を大切にする方は山から歓迎されるだろう。
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いつもお世話になっているキャラバンスキーチームの皆様もやって来た。
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みくりが池が凍り出すと、そろそろスキーコンディションも整って来る。
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同時に雪崩への警戒も怠ってはならない。
 
不慣れな方は、立山の地形を熟知したガイドを使って行動することを薦めたい。
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そして、いよいよその日がやって来る。
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場所を選べば、この時期としては奇跡的な沈降パウダーが楽しめた。
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その日を待っていれば、必ずいつか時はやって来る。
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立山閉山まで、あと6日。
訪れた皆様が笑顔で帰れるよう、あと少し頑張ろう。

この時期は、アルペンルート立山駅側は除雪が間に合わず運休となり富山に降りれないこともある。
 
私も家に帰れなくなり室堂に缶詰め。
運休からやっと富山に降りたら、今度は上がれないという。
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やはり、今日も運休。

仕方ない。
扇沢から上がることにしよう(涙)
 
富山と室堂はこの時期、近くて遠い場所なのだ。
 
2023年11月30日まであと少し。

真田の里へ [ハイグレードハイキング]

この週末は海谷周辺ガイドの予定だったが、日本海側は気圧の谷の通過で絶望的な天候になりそう。
 
転進先は無難な妙義エリアも考えたが、定番過ぎてあまりにも芸がなく、海谷山塊の代案としては場違いだ。

なので薮岩求めて信州上田へ。
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岩薮好きな登山者が楽しめる山が数多くある上田は新幹線の停車駅でもあり、東京からのアクセスも良い。
 
西の妙義とも言われるが、趣は違う気がする。
 
上田は独鈷山が有名だが、この山にも様々な特徴的な登路がある。
まずはバリエーション入門的な帰望峰から竜王山を経て独鈷山へ。
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沢を跨いで、枯葉ラッセルして苔蒸した岩稜を行く。
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上田の街並みが眼下に見える稜は気持ち良いが寒風がきついアクセント。
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楽しいチムニーから這い上がったりして、アップダウンを繰り返す。
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帰望峰。

ラッペルしてコルに降りて、また登ると。
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竜王山。
 
泥道を下降して、また登ると。
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上田を代表する独鈷山に。
 
夜は…。
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なんとなく惹かれて入ってしまった。
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戦国時代のヒーローを真田幸村をコロッケにしたらしい。

次は猿飛佐助が修行したとされる角間渓谷へ。
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3歩上がって2歩退がる的なズルズルの足場を騙し騙し登ると鬼ヶ城。
 
ここにはなぜか立派な鎖場がある。
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鬼ノ塔。
 
ここはトラロープはあるが、なんとなく嫌な予感がして、スタカットで登った。
 
鬼ノ戸渡のトラロープはフィックス先が支点から外れていた。
何も考えずに荷重したらフリーフォールだ。
 
残置されたロープは絶対疑わなければならない。
 
我々は時間は掛かっても、ラッペルして安全圏に脱出した。
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通過してから看板があったが、先に言ってくれという感じ(笑)
 
その後、ジャンクションピークを超えて、またズルズルの急斜面を上がる。
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薮を超えて雲雀峰に到着。
 
周囲の山々には雪が載っている。
この辺りはまだまだ先に繋げられるスリリングな山が多く、今後も研究してみたいところだ。
 
参加されるお客様方には、この先に何が待っているのだろうというドキドキ感をたくさん楽しんでいただきたい。
そのためには、ガイドする側が足跡を追いかけるだけじゃなくて、常に開拓精神を持たねばならぬと思う。
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下山後は、美味しい信州新そばを食す。
これは「幸村」という名前の3人前の量だが、予想より多くてお客様に手伝ってもらった。
 
上田を出て、上越に入ったら土砂降りの冷たい雨が続く。
冬の足跡が近づいて来た。

日本海側の山は、このまま季節は冬に移り変わるだろう。
今冬もたっぷり雪を楽しめるような気がする。
 
さて、そろそろ冬の準備をしよう!

御前ヶ遊窟の旬 [越後]

会越国境山郡にある御前ヶ遊窟へ通い出してもう何年になるだろうか。
春夏秋冬ここに来てみて、ベストシーズンはいつなのかを模索してみたら、間違いなく今が旬と思う。
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白い岩肌と黄金の紅葉は、来る者全てを圧倒する。
泥々の悪いアプローチを乗り換えて、ようやくこの景色に出会えることが素晴らしい。
 
あのアプローチが無ければ、このドラマは完成しない。
 
今回は3回連続して、御前ヶ遊窟を周回ガイドした。

今秋は特にアプローチの状態が悪く、連日神経が擦り減ることになった。
足場の悪いハイトラバースが連続するので、単純にロープを使う形式的なガイディングは通用しない。
悪場慣れしている信頼できるお客様とだけで来るべき場所だ。
 
水が少ない日は沢をアプローチしても良い。
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1回目。
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2回目。
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3回目。
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毎日コンディションが異なるので、ルートも変えて快適さを楽しんでいる。
 
古いリングボルトやナチュラルプロテクションも利用しながら、スラブを自由に楽しむことができる。
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ただし、進むべき場所を間違えるとハマるのがスラブの怖いところだし、御前ヶ遊窟の全体像を良く理解した上で取り付かないと、単にフィックスと鎖と踏み跡を追う面白味のないことになってしまう。
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いきなり現れる巨大な洞窟はロマン溢れる穴。

今回、私のブログを見て来たという方々が2組もいたので驚いた。

御前ヶ遊窟は有名だが、御神楽岳や前ヶ岳など会越国境山郡は岩薮好きには堪らなく楽しい場所だ。
 
この辺りを開拓した越後の岳人達に敬意を表する。
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宿泊ベースは新潟で、食を楽しむことも大切。
クルマで一時間半くらいなので、毎日通っても苦にならない。

御前ヶ遊窟の前日は、メジャーなハイキングコースの角田山で登山の基本を講習。
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今夏、剱岳をガイドしたお客様が、自分の登山を歩き方から見直したいということで催行した。
 
長い登山経験を積んできた方が、そのような気持を持つことに対して、私も自分を可視化し、更により良い知識と経験を身に付けなければならねと学ばせていただいた。
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そして、更にその前日はここを訪れた。
 
この壁を登りに来たのではなく、前日に遭難した懇意の若者の足跡を探すために1人で来た。
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静かで誰もおらず、ここで事故があったことすら信じられなかった。

ここは自分が30歳前半に初めて登りに来て以来、いろいろなルートを登って、ガイドとしても数々使わせていただいた巨大な石灰岩の岩場。
 
最後にガイドしたのは2013年だっただろうか、あれ以来ここを訪れることもなかったし、二度と来ることはないと思っていた。
 
昔は営業していたお土産屋さんの脇から踏み跡を降ると忘れられないことを思い出した。

もう30年近く前に、この壁を無事に登って展望台がある駐車場へ意気揚々と戻ってきた。

高齢の女性が一人で立っていて、「あなたのお母さんが、こんな所を登っているのを見たら泣くよ」と泣きながら声を掛けて来て、「罰当たりなことはやめなさい」「命を大切にしなさい」「こんなこと辞めなさい」と次々と言われて、返す言葉もなかった。
 
それまでも、一ノ倉を登って駐車場に降りて来ると観光客に声を掛けられることは何度もあったが、これほど真剣に訴えられたことは初めてで、いろいろ考えさせられた。
 
自分がやっていることは、世間からはそう見られるのだと。
 
この出来事は、自分の登山人生に大きく影響を与えたことは間違いなく、やりたい放題で何も考えず突き進んでいたそれまでのことを見直すキッカケともなった。
 
でも、自分はまだ山を登っている。
何度ももうやめようと思ったことはあるが、未だ続けている。

その後、山岳ガイドとしての人生を歩み、山を通じて皆様に楽しみと幸せを与えることを願っているが、今回のように明日が来なかった若者のことを思うと苦しくて仕方ないし、どうしたら良いのかもわからない。
 
まだまだ修行が足りていない。

黄金の廊下 [剱立山]

雪たっぷりの龍王岳から扇沢駅へ降りて、週末からの黒部川下ノ廊下に備える。
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週末の天気予報は両日とも雨だが、前日までのような発雷リスクは感じられない。
 
下ノ廊下ガイドの催行可否は、降雨はあまり大きな問題ではないと私は考えている。
 
もともと黒部川に沿った岩壁を辿るルートである性格上、濡れた岩の上をスムーズに歩けるお客様を参加基準としているので、雨が降って強いストレスを感じる方を対象とはしていない。
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「人間は必ず間違える」このことを繰り返し伝えて、番線へのハンドリング、スリップを防ぐ歩き方、写真撮影への注意点、危険箇所のチェックなど新越ノ滝通過までに全て再確認しながら行動する。
 
ここまで私が不安を感じるお客様が一名でもいたならば、黒部ダムへ躊躇なく帰る。
 
基本、下ノ廊下ガイドはリピーターのお客様を対象とし、ご本人の体力、技術、経験、特性を熟知して計画を立てるので、ガイドとしてやるべき仕事も想定内である。
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今回は紅葉がベストであることがわかっていたので、足元に対する注意が疎かにならないよう更に周知徹底する。
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新越ノ滝を過ぎたら、OFFだった緊張スイッチをONにする。
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別山谷で雨が強くなり、レインウェアを着用して、下ノ廊下の核心部を着実に行動する。
 
危険箇所は早く脱することが基本だが、この辺りはいくら時間が掛かっても良いと伝えている。
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十字峡はルートのハイライトであり、ここにしかない景色でもある。
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一生に一度は見て欲しい。
 
おそらく人生を彩る想い出の一コマとなることでしょう。
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黄金に染まる廊下を延々と歩く。
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仙人谷ダムの上部も綺麗だった。
雨に濡れて更に光る黄金の山々。
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歴史と浪漫が詰まった路。
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阿曽原温泉小屋に到着。
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富山の岳人を代表する御大と共にする温泉は最高だった。
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時間内食べ放題の名物カレーライス。
 
実は私が阿曽原温泉小屋に泊まる時は、空いている日が多く、カレーライスに当たるのはコロナ禍前以来だったので、懐かしい味が大変嬉しかった。
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秋はトロッコ列車が混むので、朝弁当にして、暗いうちに出発する。
 
阿曽原温泉小屋の弁当は派手さはないが、私が最も好きな山小屋弁当だ。
富山の新米と揚げ焼売が絶妙に合うのだ。
 
これを毎回必ず、折尾大滝を眺めながら食べる。
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折尾大滝前で同宿した原ガイドと。
 
彼も同時期に奥鐘山西壁や丸山東壁を登ってきた数少ない山岳ガイドだ。
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高さのある水平歩道を延々と歩く。
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欅平に到達。
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トロッコ列車に乗って、寒いに震えながら下界へ帰る。
 
今回は立山駅に置いてきたクルマを回収するためローカル線の旅は続く。
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乗り継ぎが悪く、宇奈月から立山駅へ3時間近く掛かった。
 
東京へ帰ったお客様がもう到着しても、まだ着かない。 
 
たまにはこういう時間も贅沢と思うことにしよう。
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最後のカボチャ電車で立山駅へ。
 
これも下ノ廊下という山旅の一部なのだ。

冬雷 [剱立山]

久しぶりに室堂へ上がった本日は、雷の可能性が高く、朝イチのアルペンルートで上がったので時間勝負。
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龍王岳東尾根の予定だが、間に合うか。
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岩には氷が張り付いたハードコンディション。
時間が掛かりそうな東尾根には向かわず、Ⅳ峰北面に向かう。
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雪面が硬くて、ピッケル&アイゼンワークの良いトレーニングにはなった。
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初冬の剱岳。
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とりあえず山頂に着いた。
 
下山は浄土山を回って降りた。
日本海から黒い変な雲が近づいてきて胸騒ぎがする。

室堂に降りて解散した後に雨が降り出した。

剱岳八ツ峰で凄まじい雷雨に遭って以来、雷恐怖症になり警戒心が強くなった。
 
冬雷は、夏より一発の威力が遥かにデカいので実に恐ろしい。

穂高 冬の洗礼 [北アルプス]

10月18日に還暦+1歳となり心機一転、初めての週末山行を迎える。
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ガイド予定は横尾本谷左俣〜北穂池〜北穂東稜。
昨年は同時期に横尾本谷右俣〜黄金平〜天狗池で穂高の晩秋を満喫できた。

今秋も、紅葉のトンネルを歩いて、標高上げたら新雪を纏った槍穂高稜線を満喫するという予定を組んで、参加者の皆様と楽しみにしていた。

寒冷前線の東進に影響されて、山行前日から穂高稜線は積雪量が増し、プラン催行は現地判断ということになる。
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10月に雪が降る事は、普通の事だが今秋は降り方が激しくないか。
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冷たい雨が降る上高地を出発。
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寒いけど紅葉は綺麗だ。
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横尾山荘で一番風呂に入ってから楽しいお誕生日会。
 
立山ではもう滑っている人がいるとか、槍ヶ岳山荘下の吹き溜まりでは積雪深50〜100cmとか情報が入る。
 
しかし、こんな情報はなくても、上高地から横尾を歩く中で、山が発してくれる空気感でこの時期としては尋常じゃない雪の匂いは感じている。

我々が進むべき谷筋ルートはリスクが高まり北穂東稜に上がる部分で泳ぐようなラッセルになるだろう。
お客様を説得して、北穂高岳へ上がる事を第一とするプランに変えていただく。
 
冬になりきっていない時期の降雪が如何に危険か、過去事故例から学んできたし、自分自身も何度も痛い目に遭って来た。
 
雪から数ヶ月離れていると、頭も身体も冬に対応できていないので、取るべき行動は慎重であるべきだ。
それを理解できていないが故に起こる事故が減ることを望む。
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翌朝、横尾山荘から見た前穂北尾根方面は美し過ぎた。
ネパール、中米、南米で良く見た景色にも重なる。
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屏風岩右岩壁の向こうから黄金色に輝く北穂高岳が見えて来た。
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東面は雪と岩のミックスが美しい。
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涸沢小屋からの前穂高北尾根は穂高を代表する画のひとつ。
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馴染みの小屋番から「北穂高小屋からの連絡で、南稜は使わず、北穂沢を上がってくれとの事ですが、判断は本郷さんにお任せします」と。
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分岐で南稜にトレースを確認したが、迷わず北穂沢を直登する。
 
陽があたり、雪は重くて深い。
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北穂高岳山頂からの風景は3000mオーバーの凄味を感じる。
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眼下に前穂高北尾根。
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大迫力の滝谷。
 
ドーム中央稜は数度ガイドしたが、やはり滝谷は下からメインの岩稜をガイドしたいものだと思いつつ、時を逃してしまった。
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ここ、北穂高小屋でもお誕生日をお祝いしてもらった。
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3100mオーバーにあるこの小屋は食事、ホスピタリティが抜群で運営努力を地道に継続している事を強く感じる。
 
槍穂高稜線にはこのような小屋が点在し、心強さを感じると共に甘えてはいけないとも思う。
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下山の朝を迎える。
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奥穂高岳からジャンダルムは雪が付くと迫力が違う。
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槍ヶ岳方面も10月とは思えない厳冬期仕様。
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ウインドパックされた北穂沢をロープを繋いで慎重に下降。
 
特に最上部はミスを許さない急傾斜だ。
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雪が緩み安定してくると、素晴らしい景色の涸沢カールへの下降に笑顔も戻る。
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涸沢小屋で究極のコーヒーをいただく。
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ここ十数年は剱岳ガイドに比重を置いて活動し、長く御暇したにも関わらず、昔と変わらずもてなしてくれる涸沢小屋に感謝。
 
もともと、槍穂高の北尾根や周辺岩壁、滝谷、屏風岩、北鎌尾根をガイドする機会が多かったので、ここはかつてのホームだ。
 
来年夏、槍穂高のガイドへたくさん予約をいただき再訪を楽しみにしている。
 
やはり、岩があり、雪がある風景が大好きだ。
またひとつ歳は重ねたが、まだまだその場に身を置きたいと思う。
 
記憶力や分析能力を刺激して脳の血流を活性化し、有酸素運動で老化を防ぐ作戦だが、いろんな場所を訪れることは更に良い効果なのだろうなと感じる。

白き山々の展望 [ハイグレードハイキング]

2023年10月17日の富山は秋晴れ。
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大辻山から見る立山は真っ白で、このまま下地になってくれたら、来月の立山スキーガイドが楽しみだ。
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剱岳も少しずつ冬の装いとなり、段々と心も躍る。
 
相変わらず、剱岳は恥ずかしがり屋で顔を全部見せてくれない。
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白岩川から登り、岩場でロープワーク講習。
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手っ取り早く結果を得ようとする登山者が多い中で、こういう事を学びたいと思う方がいることは嬉しいし、なにより本人の登山に対する姿勢として正しいと思う。

頭で考えるより、慣れて身体に染み込ませるべきこともある。
それが洗練された無駄のない動きに繋がる。
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大辻山は黄色が美しい。
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素晴らしい展望を堪能できる秋晴れの一日になって良かった。
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今日は自分も60歳最終日。

男の還暦は厄年でもあるので、この一年なんとか乗り切ったなぁ…
 
とか…考えながら本道ルートをのんびり降りていたら、林道直前で熊にバッタリ!
 
顔が会った瞬間に熊が逃げて行ったので良かったが、そろそろ気をつけないといけない時期だね!

1111峰 [越後]

この週末は、土曜日が快晴で、日曜日が冷たい雨の天気予報。
楽しい週末を過ごしていただきたいのだが、なかなか思い通りにならないのが登山というもの。
 
予定は、新潟の飯士山負欠スラブと米子沢。
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飯士山負欠スラブは、快晴ポカポカでこれ以上ないコンディション。
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ホールド豊富なので、グイグイ高度が稼げて気持ちいい。
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負欠岩は裏から簡単に上がれるが、蛇がよくいるのでスルー。
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ここは標高1111m。

平成11年11月、同じく負欠スラブをガイドで来て記念写真撮ったことを思い出した。
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上部は秋が深まりが綺麗で、尾根ルートをのんびり降りた。
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中野屋で、へぎそばを食べた。
 
問題は日曜日の米子沢。
 
雨は大したことなさそうだが、寒さとか昼からの風を考えたら、地獄になりそうで中止した。
考えれば考えるほど、沢登りには向かない日なので諦めた次第。

晩秋の富山最高峰へ [剱立山]

黒部奥山から降りて、翌日は天狗平へ上がる。
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天狗平を散歩しながら、冷たい晩秋の風を感じる。

先週の雪は随分溶けたが、雪氷に覆われた立山は美しく、もう冬の匂いがする。
 
やはり、ここは国内最高の別天地だ。
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夕方にはKING剱岳が顔を出してくれた。
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もうすぐ天狗平山荘もシーズン終了を迎えるが、兄貴は元気でなによりだ。
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久しぶりのペアルック。
自分の背中が小さく見えて嬉しい。
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手抜きなしの豪華な夕食。
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シャリキンホッピーが飲める山荘として是非方針継続して欲しい。
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翌朝は室堂から一ノ越を経て立山へ。
 
龍王岳東尾根も薄氷被り、一ノ越山荘ももう少しでクローズ。
今年もいろいろお世話になりました。
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三ノ越からは少しずつ硬い雪面が出て来る。
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夏は訪れることはない雄山へ。
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雄山神社峰本社から剱岳を眺める。
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ここから先は前爪付いたアイゼンが必要なコンディションだった。
 
スリップに備えてロープを繋ぐ。
写真ではトレッキングポールを使っているが、状況に応じて素早くピッケルに変えている。
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富山県最高峰であり、日本最北端の3000m峰。
 
この時期なのに、夏装備そのままの登山者がたくさんいて驚いた。
ピッケルはおろかトレッキングポールもアイゼンもなし、トレッキングポールを持っていても、先にゴムキャップを付けたまま。
チェーンスパイクを履いている登山者はまだ良い方だ。
 
その装備で、再凍結した硬い雪面を降りれる実力があるなら良いだろうが、とても雪山を経験したことがなさそうな人がほとんど。
 
奇声を発しながら威勢のいいリーダーっぽい男に連れられてきたグループは雄山ピストン予定だったらしいが、大汝山について来た。

多くの登山者が好天に誘われて先の稜線に進むのを見て、自分達もと思ったのだろうか。

怖くなった若い女性が硬い雪面にお尻をつきながら降りて来る姿を見ると、なぜそのような判断をするのか…恐ろしくて見ていられない。

数多くの登山者が付けたステップがあるから、何とか歩けるものの、気象が急変してステップが消えたら行動不能になる登山者がほとんどだろう。
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これを見た時はこんなこと書かなくてもと思ったが、立山稜線に少しの時間いただけで、書く人の気持ちがわからなくもないと思った。

黒部川下ノ廊下 [剱立山]

黒部川下ノ廊下へ。

10月三連休最終日早朝、雨が降り続く信濃大町駅に集合。
 
タクシーで扇沢へ向かうが、お客様方は皆口数少なく俯き加減で、これからどのような状況になるか不安でいっぱいという雰囲気。
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黒部川の中流域に位置する下ノ廊下は降雨時には、難易度が格段に上がるのは言うまでもない。
 
でも、しかし…下ノ廊下ほど雨が似合う景色はないと思う。
 
ここをガイドすることは剱岳北方稜線や源次郎尾根などより、遥かに難しいと思っている。
ショートロープが使える場所がほぼなく、お客様との信頼関係がとても大切。
 
危険箇所では緊張感を持って確実に行動する、休憩できるポイントでは緊張を解して笑い楽しむ。
緊張のオン、オフを丁寧にコントロールしてあげるガイディングがマストだ。
 
であるから、ガイドはこのルートの隠された危険箇所とレストポイントを全て頭に叩き込み、喉が枯れるほど常にお客様へアテンションを継続しなければならない。
 
気を抜いてガイドしていたら、お客様はあまりの風景の美しさに夢心地になってしまい、自分の置かれた状況を忘れてしまうのだ。
それが下ノ廊下の恐ろさだ。
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土曜は登山者でごった返していた扇沢も、この日は登山者数名でガラガラ。
 
雪と雨の予報で、中止した登山者がほとんどだろう。
 
予想できるリスクと参加されたお客様を考えて、下ノ廊下をガイドできると判断した。
一名でも不安を感じるお客様がいたら、当然中止していただろうし、黒部川へ降りてみて、その場で行くべきではないと感じたら迷わず帰って来るつもりだった。
 
黒部ダムを出発しても、雨は降り続く。
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黒部の巨人「丸山東壁」
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黒部の魔神「オオタテガビン南東壁」
自分には登る実力がなくて、結局登れなかった悔しい壁。
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新越ノ滝を過ぎたら、ようやく雨が上がった。

阿曽原温泉から黒部ダムへ向かう登山者とのすれ違いが始まった。

そのうちの単独者が、別山谷出合で太腿までの渡渉だったと言う。
この程度の雨で、そんなことはあり得ないだろうと思ったが、その覚悟は持って向かった。
 
渡渉が危険だったら、黒部ダムへ帰ることになるだろう。
 
丸太橋はロープを使ってビレイしながら進み、時間は掛かっても仕方ないと慎重に行動した。
 
そして、別山谷出合へ着いたら、なるほど水量は予想以上に多かった。
 
赤布とフィックスが張ってあるルート部分は、深過ぎて軽い女性には危険なので、別な渡渉ポイントを落ち着いて探した。
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そして、ここしかないという絶好のポイントを見つけたので、側壁をクライムダウン、一名づつ岩をジャンプして足を濡らさず越えることができた。
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あとは、水に触れることなく、十字峡を目指すことができる。
  
白竜峡は水量が多過ぎて、判然としない。
  
十字峡広場でマッタリ休憩してから、本日のメインへ。
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十字峡はいつも通り、感動の美しさ。
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吊橋は高度感あって、剱沢の水量が大迫力。
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半月峡を過ぎたら、先は見えて来る。
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S字峡を過ぎたら、標高を下げて黒部川を渡る。
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東谷吊橋も高所恐怖症にはキツイ。
 
関電施設内、人見寮を通過して、権現峠への急登を終えると今宵の宿は近い。
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阿曽原温泉小屋はキャンセルが多かったようで、空いていてゆったりできた。
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夕食はカレーライスではないが、天ぷらがとても美味しい。
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そして、豚汁食べ放題が嬉しい。
 
翌朝はヘッドライトを付けて、雨の中を出発。
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折尾大滝で定番記念写真。
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阿曽原温泉小屋のお弁当は新米が美味しい。
 
雨が上がり、青空も覗きだした。
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黒部の怪人「奥鐘山西壁」が近くなってきた。
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大太鼓は高度感満点。
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志合谷トンネル内はびしょ濡れ。
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少し紅葉もあった。
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30kmの山旅は無事に終了した。
  
皆様、達成感満点だったことと思う。
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トロッコのお姉様はハロウィン仕様。
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これに乗って下界へ帰る。
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宇奈月温泉へ。
 
楽しいメンバーで忘れられない下ノ廊下が終わった。
たった二日間とは思えないほど、いろんなことがあった素晴らしい旅だった。
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地鉄に乗って、それぞれの家に帰宅する。
皆様、ご一緒していただき感謝します!